ディスカッション:糖尿病と眼病変
内科の立場国立長寿医療研究センター 糖尿病センター
中川内 玲子 先生
眼科の立場国立長寿医療研究センター 眼科
藤井 有紀子 先生
平成26年12月13日(土)京都府医師会館にて「糖尿病と眼病変」をテーマに行われた。
最初に同一症例を内科、眼科それぞれの立場から解説いただき、問題点をディスカッションする試みを行った。内科から国立病院機構京都医療センター 糖尿病センターの中川内 玲子先生より、血糖コントロールや高血圧、高脂血症が及ぼす網膜症の進展への影響について解説があり、今回の症例の内科的解説が行われた、次に医療センター眼科の藤井友起子先生より眼科的経過や治療について発表があった。その後のディスカッションでは症例の眼科治療の選択や随時の血糖コントロールとの関係について、また急激な血糖コントロールが及ぼす網膜症悪化について現在の知見など活発なディスカッションが行われた。
(文責:米田紘子)
「糖尿病網膜症の治療最前線 -眼によりやさしい治療へ-」
国立病院機構京都医療センター 診療部長・眼科科長
喜多 美穂里 先生
2006年京大眼科准教授だった時に、この会の特別講演をさせていただいた。糖尿病網膜症に対する眼科診療がこの8年間でどう変わったかについて解説した。
1.検査の進歩
検査の進歩としては、まず、眼底カメラの広角化があげられる。これまで55°の写真を、眼位・頭位変換によって撮影後パノラマ合成していたものが、200°超広角カメラを使用して撮影すれば、1回の撮影で可能となる。また、赤外光で断層写真を撮る光干渉断層計(OCT)は、タイムドメインからスペクトラルドメインになり、解像度を飛躍的に増した。さらに、スエプトソースOCTによって造影剤の不要なOCTアンギオの時代が来るかもしれない。
2.レーザー治療の進歩
糖尿病網膜症の基本治療法ともいえるレーザー治療も、short weave パターンレーザーの開発によって、網膜内層への傷害の少ないレーザー照射が、効率的に行えるようになった。また疼痛が少ないことも、レーザー治療途中のドロップアウトを減少させることにも役立っている。
3.medical retinaの進歩
以前はオフラベル使用で対処していた、ステロイド懸濁液・抗VEGF薬の眼科製剤の市販化によって、硝子体注射療法の機会が増えている。これに伴い、黄斑浮腫に対する硝子体手術の適応は減少傾向となった。
4.surgical retinaの進歩
失明原因第1位であった糖尿網膜症は、その座を緑内障に譲り2位となった。最近では、その軽症化が言われている。しかし、網膜外科専門医のもとを訪れる症例は、まだまだ重症例も数多く、surgical retinaの出番は決して少なくなっていない。
surgical retinaにおける最近のトレンドは、「より小さく」「より広く」「よりやさしく」である。
<より小さく>
従来20G(直径約1mm)システムで行われていた硝子体手術は、小切開し、23G、25G(直径約0.5㎜)システム手術が主流となった。小切開化は、手術時間の短縮・後炎症の減少・早期視機能改善をもたらし、手術低侵襲化をもたらした。今後、27G、29Gと更なる小切開化が進むものと思われる。
<より広く>
従来は、手術用コンタクトレンズを使用して眼内を観察していたが、現在では、倒像鏡にコンバータシステムを備えた広角観察システムを用いるのが主流である。一度に100°を超える範囲を観察しながら手術操作をすることで、手術の効率化・安全化が図られた。
また、左手に持ったライトパイプを用いたポットライトで眼底を照らしていたが、広角観察システムを用いて、より広く眼底を見ることができるのだから、これではもったいない。そこで、現在では、シャンデリアライトで広く眼底を照らすことが行われる。このことによって、左手に攝子を持つことが可能となり、双手法で増殖膜処理が行えるようになった。
<よりやさしく>
糖尿病の際には、散瞳が不良である例も少なくない。こうした時には、広角観察系を用いても、眼球圧迫を併用した周辺手術操作が必要となる。眼球圧迫は、術中疼痛、術後炎症を増加させる。
周辺の観察に、内視鏡を用いれば、眼球内から直接眼内を観察することができるため、眼球圧迫は不要で、手術の低侵襲化が図られる。つまりよりやさしい手術が可能となる。また、内視鏡で病変に近づけば、拡大して観察することができることも大きな強みである。眼内内視鏡は、小切開硝子体手術システムにも対応している。
ワンポイントレクチャー「COPD最近の話題」
浅本内科医院 院長
浅本 仁 先生