第20号 −平成25年9月20日発行−
■発行人:和田成雄  ■編集人:井原 裕  ■題字:福井 厳 顧問
第23回 糖尿病医会 学術講演会
テーマ 「最近の抗血栓療法と糖尿病」
平成25年6月22日 京都府医師会館
総合司会 特別講演司会 特別講演司会 ワンポンイントレクチャー司会
いはら内科クリニック 京都桂病院 京都医療センター にしじま眼科
井原 裕先生 山本 泰三先生 島津 章先生 西嶋 一晃先生
最近の抗血小板療法について
東北大学 加齢医学研究所 教授 堀内 久徳 先生
 血小板は活性化されるとトロンボキサンA2を産生し、ADPやセロトニンを含む顆粒を開口放出する。それらは血小板のセルフアゴニストとして、血栓形成の場での血小板活性化を亢進させる。抗血小板薬は種々の経路で血小板活性化を抑制しているが、活性化増幅系に作用しているものが多い。  抗血小板療法ではイベントの抑制とともに増加する出血性合併症を考慮して、適切に投与しなければならない。日本でのアスピリン単独療法下での輸血以上の大出血の頻度は0.5〜1.0%程度発生しており、アスピリンを一次予防のため投与する場合は相当にハイリスクの症例に限るべきである。また、抗血小板薬を単剤で治療する場合、循環器分野では歴史的にアスピリン単独が好まれているが、脳卒中分野では、ADP受容体拮抗薬とアスピリンは半々である。循環器分野でも、効果と安全性を鑑み、ADP受容体拮抗薬単独療法が評価されつつある。
 糖尿病は喫煙と共に閉塞性動脈硬化症(PAD)の強い危険因子である。TASCIIのPAD治療ガイドラインでは、動脈硬化危険因子のコントロールと抗血小板療法によって心脳血管障害を予防すると共に、血管拡張療法によって症状改善を図ることが推奨されている。症状改善のための第一選択薬は、抗血小板作用を併せ持つシロスタゾールである。シロスタゾールはその薬理作用で頻脈やほてり・頭痛を来すことがあるが、我が国における2度にわたる大規模試験においてすばらしい脳梗塞再発予防効果を発揮している。
 フォンヴィルブランド因子関連疾患が最近のトピックスとなっている。血小板が速い流れの中で血管壁と相互作用するときや血小板凝集塊形成には、フォンヴィルブランド因子(vWF)の力を借りる。vWFは巨大マルチマーとして形成され、ADAMTS13という酵素によって適度な大きさに分解され血中では2−80分子の複合体として存在する。高いシェア(速い流れ)にさらされて構造変化を起こして切断部位が露出したvWFを、ADAMTS13が切断すると考えられている。vWFの巨大マルチマーは血栓形成に傾き、マルチマーが小さいと出血傾向となる。ADAMTS13の遺伝的欠損は、vWFが分解されずに巨大となり、微小循環系で血小板血栓が多発し、遺伝性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)となる。一方、重症の大動脈弁狭窄症では狭窄した大動脈弁の部位で非常に高いシェアがかかり、vWFが過度に切断され、後天性フォンヴィルブランド病となる。そのため、大動脈弁狭窄症ではしばしば消化管の大出血を来たし、ハイド症候群と呼ばれる。この疾患は、それほど珍しくなく日常診療でも時に遭遇するので留意すべき疾患である。
新規抗凝固薬を用いた心房細動の管理
京都医療センター
 循環器内科医長・診療科長 赤尾 昌治 先生
1.心房細動と抗凝固薬
 心房細動は高齢化社会が進むにつれ増加の一途をたどっており、いまやcommon diseaseといってよい疾患である。糖尿病は心房細動の発症を促進することが知られており、糖尿病医においても馴染みの深い疾患であろう。心房細動は、脳塞栓症の原因疾患として重要であるが、脳塞栓予防にはこれまで専ら、抗凝固薬であるワルファリンが使用されてきた。しかしながら、ワルファリンは、数多い食事制限や併用薬制限、出血合併症や投与量コントロールの煩雑さから、使用の難しい薬剤であった。
 こうしたワルファリンの欠点を克服すべく、凝固カスケードのキーファクターを選択的に抑制する新規抗凝固薬(NOAC)が開発された。先陣を切って、2011年から抗トロンビン薬であるダビガトランが登場し、続いて選択的凝固第10因子阻害薬として、2012年にはリバーロキサバン、2013年にはアピキサバンが登場し、その後にもエドキサバンが控えている。NOACの登場により、心房細動治療は新たな時代を迎えつつある。
2.伏見心房細動患者登録研究
 こうした、心房細動治療の大きな変革期において、伏見区の心房細動管理の現状を正確に把握し、伏見区の脳塞栓患者をひとりでも減らすことを目標として、2011年3月から伏見心房細動患者登録研究を開始した。現時点で、登録症例数は3378例と、人口の約1.2%にのぼる症例が登録されており、これまでに報告されている0.6%という有病率をはるかに上回っていた。また、CHADS2スコアは2.1点と従来の報告よりも高く、しかしながらワルファリンの処方率は48.5%と、全体に半数以下であった。こうした現状から、実臨床の現場における心房細動患者は、これまで考えられていた以上にハイリスクであり、抗凝固薬の使用率が低い現状(抗凝固薬のunder-use)が浮き彫りになった。さらに、ワルファリンを使用されている患者においても、出血を怖れて弱めのコントロールとなっている症例が多く(抗凝固薬のunder-dose)、必ずしも予防効果を充分に発揮できていない可能性も示唆された。
3. NOACの適正使用
 ワルファリン時代の抗凝固療法の問題点を踏まえ、NOACを適正に使用するためには、under-useを避ける、under-doseを避けることがポイントとなるであろう。under-useを避けるためには、CHADS2スコア1点以上の症例(全心房細動患者の90%を占める)においてNOACの使用を考慮すること、またunder-doseを避けるためには、添付文書通りの用法用量を遵守して、安易に低用量に逃げないようにすることが重要と考える。NOACの各薬剤の用量設定はそれぞれに異なっており、これを正しく理解することが必須である。
ワンポイントレクチャー:糖尿病黄斑浮腫の薬物療法
京都大学大学院医学研究科 眼科 村上 智昭 先生
 糖尿病性黄斑浮腫の診断とその治療、抗VEGF療法、ステロイド療法についてのポイントを講演して頂いた。
ディベートカンファレンス
「糖質制限、あなたはどう考える」
平成25年4月20日 京都大学医学部芝蘭会館
 2013年4月20日(土) 京都糖尿病医会主催で「糖質制限、あなたはどう考える」をテーマに講演、討論会が京都大学医学部芝蘭会館にて行われた。
 最近ブームになっている糖質制限について、まず従来の栄養指導派として帝塚山大学教授(元京都大学教授)の津田謹輔先生、そして糖質制限派として北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生をお招きしてご講演を拝聴した。約90名の方が参加され、活発な討論が展開された。司会は京都府立医科大学の福井道明先生、日本バプテスト病院米田が担当した。
 昨今糖質制限食がマスコミ等で取り上げられ、極端な制限による事故例も発生していることから冒頭に今回のテーマとした理由を米田よりご説明した。そして津田先生より今日の栄養指導の基盤となる栄養素のバランスの意義や歴史的背景についてご講演をいただいた。次に糖質制限を実際の栄養指導に組み込まれている山田先生より糖質制限の方法や意義、そして従来の食事療法評価の問題点等についてご講演をいただいた。糖質制限についてはまずはエネルギー制限をした上でのオプションとしての方針を述べられた。お二人の先生とも、日本人の食生活の変化とともに食事指導についてはある程度の自由度を持たせることが必要と考えておられ、特定の栄養素の制限ではなく、まずはカロリー制限あっての、バランスを重視したものを推奨されたと思う。またその後の討論会では参加の先生方とともに活発に討論が行われた。最後に栄養士の立場として大阪大学医学部管理栄養室長の長井直子先生よりコメントを頂いた。食事指導の奥深さや栄養管理評価の難しさ、健康寿命を維持するための今後の栄養指導の在り方について深く再考することができ、有意義な時間を過ごすことができたと考える。ご講演いただきました先生方およびご参加いただきました先生方に深く感謝申し上げます。
(文責:日本バプテスト病院 米田 紘子)
第56回 日本糖尿病学会年次学術集会に参加して
大石内科クリニック 大石 まり子
 日本糖尿病学会は5月16日〜18日、熊本で開催された(会長:熊本大学・荒木栄一教授)。前日夜に到着する会員のためにJR熊本駅で登録でき、くまもんが会場横のアーケイドに現れてくまもん体操を披露、ブルーサークルメニュー提供店マップ(600Kcal未満、塩分3g未満の食事を提供する飲食店)が配布されるなど、熊本市を挙げての歓迎ぶりが感じられた。
「熊本宣言2013」
  さて、今回の学会のテーマは「糖尿病学の進化と絆」である。糖尿病学は他領域の技術や学問と結びついて進化を遂げている一方で、近年の糖尿病患者増加を阻止するためには医療連携だけでなく、保健部門や海外とも連携して実学としての成果も期待されている。その中で新しい糖尿病の治療目標が「熊本宣言2013」として採択された。
 新基準は、HbA1c値の7.0%未満を「糖尿病合併症予防のための目標」と定め、これを軸に6.0%未満を「正常化をめざす目標」、8.0%未満を「治療強化が困難な際の目標」とされた。従来のコントロール評価基準よりも分かりやすく、患者目線に立って、予防と治療の向上に重点を置いたものになっている。
「糖尿病と癌」
 本学会のトピックスの一つが日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会である「糖尿病と癌に関する委員会」の報告である。欧米では糖尿病患者に癌の発生リスクが高いことが注目されており、日本ではどうなのかに答えるものであった。日本人糖尿病患者の全癌罹患リスクは、男女ともに1.19倍で、癌種別では大腸癌(1.40倍)、肝臓癌(1.97倍)、膵臓癌(1.85倍)が有意に増加、他の癌種については関連がないと報告された。 癌罹患リスクが高まる機序としては、インスリン抵抗性と高インスリン血症、高血糖、炎症が想定された。糖尿病治療薬との関連は現時点では明らかでなかった。糖尿病と癌の関連は重要な問題であり、今後継続して両学会で検討されるとのことである。
「糖尿病診療の絆」
 地域の糖尿病専門医と非専門医(内科以外の科を含めて)の連携、多職種間の連携、保健や介護との連携、など全国の実践事例が紹介発表された。糖尿病連携手帳の利用、コーディネイターの設置、地域での人材育成など、地域特性を考えて、各者、苦労しながら体制を構築されており、成功事例から学べることも多かったが、汎用性のある仕組み作りはまだまだ難しいと思われた。
 会場が分散しており、移動に不便はあったものの、近くには熊本城があり、大きな石垣と緑に囲まれ、歴史を感じつつ、ゆったり過ごせた学会であった。
ADA2013学会参加報告
第73回米国糖尿病学会議(ADA)
2013年6月21日(金)〜6月25日(火) シカゴ(米国)
京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科学 藤田 義人 先生
 2013年6月21日から5日間にわたり米国シカゴにおいてAmerican Diabetes association(ADA)が主催する第73回ADA scientific sessionsが開催され、14,000人以上の参加者が世界各国から集まった。大規模臨床試験の最新報告から基礎研究まで興味深いテーマが目白押しであったが、本稿では特に印象に残ったテーマについて紹介したい。
 DCCT/EDIC試験(Diabetes Control and Complications Trial / Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)の30周年記念シンポジウムでは1型糖尿病患者に対する代表的な大規模調査研究であるDCCTとその追跡観察研究であるEDICのこれまでの成果と最新知見が報告された。DCCTの結果では、強化療法群が従来療法群と比べてHbA1cが約2%低下し、細小血管合併症の抑制に有効であることが確認された。さらに合併症の発症・進展に対する影響を調べるために観察期間を延長した研究(EDIC)が行われ、過去の良好な血糖コントロール維持によりDCCT後10年を経ても細小血管合併症の進行が抑制され続けることが示された。今回のシンポジウムでは、EDICにおけるさらに長期の追跡期間においても細小血管合併症の抑制効果が維持されていることが示された。網膜症についてはEDICから18年後でも強化療法群が従来療法群と比べて重症糖尿病網膜症リスクは35%低下しており、アルブミン尿抑制効果が長期にわたる追跡期間中も維持されていた。また、これまでエビデンスが不足していた1型糖尿病症例の大血管障害に対する血糖管理による予防効果についての調査結果が報告された。DCCT/EDICの平均17年のフォローアップ期間中、強化療法群では従来療法群に比べ心血管イベント累積発症率の42%の低下が見られることなどが明らかにされているが、ジョージ・ワシントン大学のJohn M. Lachin氏はその効果が2012年まで維持されていることを明らかにした。
 術前の血糖コントロールをどの程度厳格に行うべきかについての興味深い報告が発表された。心臓手術を施行された非重篤な糖尿病患者を対象に、強化血糖管理と標準血糖管理を比較した単施設無作為化試験において、Calles-Escandon氏は、強化血糖管理(空腹時血糖値120mg/dL未満、それ以外の血糖値150mg/dL未満)は標準血糖管理(180-200mg/dL)に比べ、入院期間・再入院および感染症の減少をもたらさず高頻度の低血糖、脳卒中との関連が示唆されたことを報告した。2013年の米国糖尿病学会ガイドラインでは、入院時の血糖管理について、極めてコントロール不良な糖尿病患者では持続する高血糖に対し、140-180mg/dLを目標としたインスリン治療の導入を推奨しているが非重篤な患者では特定の血糖値を目標とする明らかなエビデンスはないとしている。今回の報告は今後の術前血糖コントロールの治療指針に影響を与える可能性がある。
 筆者は一般口演の代謝学のセッションにて発表を行った。eNOSの機能障害がインスリン抵抗性や糖代謝異常を引き起こすことから、eNOSの共因子として働くテトラヒドロビオプテリン(BH4)に着目し糖代謝制御機構について解析を行った成果を報告した。ADA scientific sessionsでは各々の分野のエキスパートが一同に介し、どのセッションにおいてもレベルの高い発表と活発な討論が繰り広げられており、充実した学会参加となった。
お知らせ
第50回日本糖尿病学会近畿地方会
第49回日本糖尿病協会近畿地方会
京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学 原島 伸一 先生
 京都が最も美しくなる紅葉の季節、11月23日(土)に、第50回日本糖尿病学会近畿地方会/第49回日本糖尿病協会近畿地方会が開催される。糖尿病学会近畿地方会の会長を京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学教授の稲垣暢也先生が、糖尿病協会近畿地方会の世話人を京都府糖尿病協会支部長の馬詰亮三氏が務められる。
学会のテーマは、「50年の歴史が織りなす糖尿病学の未来〜研究・治療・療養指導」である。近畿支部は50年という節目の年を迎えた。90年以上前にインスリンが発見され、また、50年余り前からSU薬やビグアナイド薬が糖尿病治療薬として使われるようになった。この間、インスリン製剤は様々なタイプが開発され、さらに異なる作用機序を有する経口血糖降下薬が登場した。最近では、インクレチン関連薬が登場したことにより糖尿病治療は大きく変わってきている。加えて、技術革新により、血糖測定器やインスリン注射器などのデバイスも日々進歩し、近い将来Closed loop systemも実現する予定である。大規模臨床研究も多く実施され、糖尿病の疫学や治療に関するエビデンスも次々と蓄積してきている。しかし、稲垣暢也会長が学会ホームページの会長挨拶で述べられているように、科学や技術が進歩しその恩恵を享受しているにもかかわらず、糖尿病を持つ人々は今なお増え続け、合併症は減少に転じていない。糖尿病を持つ人々が健康な日常生活を送り寿命を確保することは、日本糖尿病学会が糖尿病治療の最終目標としているものである。本学会では、これまでの糖尿病学の歴史を謙虚に振り返り、現在の糖尿病医療において何が求められているのかを共に考え、そして目標に向かって明日の新しい時代を作っていくことを目的に、様々なプログラムを考案している。
特別に企画された「50周年記念講演」では、大阪大学医学部名誉教授で大手前病院名誉院長の垂井清一郎先生が近畿支部の歴史と未来についてご講演される。特別講演では、関西電力病院院長で京都大学医学部名誉教授の清野 裕先生が、「インクレチン」についてご講演をされる。教育講演は5つ行われ、「膵・膵島移植」、「インスリン分泌」、「メタボリックサージェリー」、「膵島イメージング」、「薬物療法」について、各分野の専門家からUp to Dateを聴くことができる。シンポジウムは2つ行われる。シンポジウム1は「食事療法」をテーマに、「わが国における食生活の変遷」、「たんぱく制限と透析予防」、「脂質摂取と肥満」、「糖質制限の糖代謝に及ぼす影響」に関して、ご専門の先生方にご発表いただく。シンポジウム2は、「チームで行う療養指導の重要性」をテーマに、「糖尿病透析予防」、「フットケア」、「糖尿病カンバセーション・マップ」、「運動療法」、「服薬指導」、「臨床検査」に関して、最新の情報や各施設の体験などをご発表いただく。糖尿病協会近畿地方会では、京都府立医科大学の中村直登先生に特別講演をお願いし、患者交流会では、京都、大阪、兵庫、滋賀地区を代表する患者さんが、これまでの体験や日ごろの思いを発表される。
 本学会に、多くの医療関係者が参加され、糖尿病治療の目標の達成に向けて熱い議論がなされることを希望する。詳しくは、ホームページをご覧いただくか、大会事務局までお問い合わせいただきたい。
第50回日本糖尿病学会近畿地方会大会事務局
京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学
メールアドレス:50k-jds@metab.kuhp.kyoto-u.ac.jp
TEL:075-751-3562
FAX:075-771-6601
URL:http//www.creative-tours.co.jp/50-k-jds/
糖尿病医会・循環器医会合同講演会のお知らせ
Diabetes & Cardiovascular Joint Meeting 2013
日時:2013年9月28日(土)17:30〜20;00
場所:京都ホテルオークラ
特別講演1 心血管代謝病と老化蛋白(AGE)
留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学講座 教授 山岸 昌一 先生
特別講演2 糖尿病治療の近未来〜新しい治療薬への期待〜
滋賀医科大学附属病院 病院長 柏木 厚典 先生
パネルディスカッション 糖尿病を合併する虚血性心疾患の診療
ディスカッサント 島原病院 院長 高橋 衛 先生
三菱京都病院 院長 三木 真司 先生
かぎもとクリニック 院長 鍵本 伸二 先生
京都府立医科大学 内分泌・代謝内科 講師 福井 道明 先生
糖尿病医会事務局だより
かぎもとクリニック 鍵本伸二
 今年も猛暑と局所的豪雨やそれに伴う自然災害のニュースが繰り返されており、その合間に福島第一原発からは「冷温停止状態」にそぐわない生々しくかつ恐ろしい事実が聞こえてきます。これが「平年並み」に思われてしまうのがまた恐ろしい気がします。
 私が糖尿病医会事務局を引き継いで2回目の事務局便りとなりました。まずは、平素から事務局の拙い運営に、寛大なご協力を頂いている会員の先生方にお礼を申し上げます。今後ともできる限りスムーズな運営ができるよう、努力して参りたいと思いますので、お気づきの点などありましたら、お気軽にご連絡を頂戴できますと幸いです。さて、形式的なご挨拶だけでは面白くありませんので、話のネタに当院で行なっているハイキング会のことを少しばかり・・・。
 当院では平成18年の開業当初から運動療法の指導に力を入れてきましたが、患者会でハイキングに行くようになったのは3年前からです。天ヶ岳(鞍馬の北東、標高788m)から東に延びるシャクナゲ尾根という道があり、ゴールデンウイークの頃には道の両側にシャクナゲの花が咲き乱れます。「一緒にシャクナゲ尾根にハイキングに行きませんか」と待合室に張り出したところ、思いがけぬ反響があり、総勢30名で山に出かけました。予想通り(?)のトラブルがあったものの無事に終えることができ、その後もハイキング会が続くことになりました。その一環として、京都一周トレイルを順に辿っています。 京都一周トレイルは、京都市や京都山岳連盟などによって整備された、京都盆地の東、北、西をコの字型に取り囲む全長約70キロにおよぶ入門向けのハイキングコースです。かぎもとクリニック隊は、@伏見稲荷→将軍塚→蹴上げ、A蹴上→大文字山→銀閣寺道、B北白川→瓜生山→比叡山頂、C比叡山頂→延暦寺→大原(写真1)、D大原→江文峠→鞍馬、E二ノ瀬→夜泣き峠→上賀茂、F上賀茂→氷室→高雄、G高雄→清滝→嵐山へと回を重ね、次の第9回で嵐山→松尾山→桂と歩いてゴールの予定です。
 できるだけ多くの患者さんに京都一周トレイル完歩の喜びを味わってもらおうと、春秋の季候の良い時期を選んで計画していますが、それ以外の時期も歩きたいという物好きも多いため、「京都一周番外編」と称して毎月のようにハイキング会を催しております。今年1月にはアイゼンを付けて樹氷を見に行く雪山ハイキングも実現しました(写真2)。
 患者会でハイキングを計画する際に最も気をつかうのが安全対策です。最も重要なのは、参加者個々の体力や技術を把握し、予定ルートの条件に照らして、適切に参加可否の判断を下すことだと思います。基本的に私が何度か歩いたことがあるルートばかりですが、登山道の状況は刻々と変わりますので、出来る限り直前に最終下見に行くことにしています。
また、ある程度のトラブルに対処できるよう、通常のハイキング用品プラスαの道具(写真3)と簡単な医薬品(NSAID、下痢止め、芍薬甘草湯、エピペンなど)を持参し、予備の食料・水などをあわせてほぼ満杯の40Lザックを、毎回背負って歩いています。幸いほとんどの物は使う機会がなく済んでいますが、今までの経験上、細引きと芍薬甘草湯は必需品と思っています。
写真1:京都一周トレイル、ケーブル比叡山頂駅から延暦寺に向かう途中、眺望のよい広場で 写真2:平成25年1月、鈴鹿山系の綿向山(1110m)に雪山ハイキング。患者さんのうち1名を除いて、アイゼン歩行初体験でした 写真3:患者会ハイキングの物品。聴診器の下、血圧計から右にむかって、パルスオキシメーター、マウストゥーマウス用マスク、携帯心電計、エピペン、ハイシップスプレー、山ビル忌避剤、細引きとカラビナ。下の段、無線機から右にむかって、登山用GPS、血糖測定器、ヘッドランプ2個、インセクトポイズンリムーバー、ハッカ油スプレー、日焼け止め、酒精綿、絆創膏、裁縫セット、瞬間接着剤、レスキューシート、笛付きライト、マルチナイフ。
保険診療のQ&A
審査会報告
・インクレチン関連製剤が多数使用されていますが、併用薬は薬剤毎に異なります。今一度確認をしていただき、間違いのないようにお願いいたします。 ・SU剤とグリニド系薬剤の併用は合剤を含めて、容認されておりません。
・血糖自己測定加算は3か月に3回まで認められています。隔月に受診される場合は3か月に4回算定することになりますが、隔月であればOKです。もし、2回分算定した翌月にたまたま受診された時に再び2回分算定しますと、連月で4回算定したことになり、これは不可です。1回分は査定されることになります。
・突合審査が始まっています。院外処方箋の病名漏れが無いか、十分検討しておいて下さい。コンピューターは病名漏れを見逃しません。
・「糖尿病疑い」の病名で連月に亘りHbA1cを測定しておられるレセプトがあります。糖尿病の診断は「糖尿病の臨床診断のフローチャート」に従い検査を進めてください。また、「糖尿病疑い」でGAや1.5AGは認められません。
・血糖自己測定80回、100回、120回を算定できるのは1型糖尿病のみです。
・2型糖尿病でも1日4回以上インスリン注射をしている場合は「注射針加算200点」の算定が可能です(1日4回以上注射している旨の注記が必要)。
・BG剤で1日750r以上の投与が認められているのはメトグルコのみです。
・多くの疾患に対して診療ガイドラインが作成されていますが、記載内容が全て保険審査で容認されているとは限りません。疑問に思われることが有れば京都糖尿病医会事務局までお尋ね下さい
最近の審査は医療機関に対して大変厳しくなってきています。しかし、ルールに則った普通の診療を行っておれば査定や返戻など何も問題はありません。保険診療における一般的注意事項を列挙いたします。これに沿った診療をお願いいたします。
・研究的診療は不可。
・実地診療に役立たない検査、効果が確認されていない治療は不可。
・「疑い」段階を含め予防的投薬は不可。
・検査は網羅的・画一的に行うのではなく、順を追い、症例を選んで施行する。
・治療は、まず生活習慣の改善、次いで内服薬、それでも効果が得られないときに注射療法を考慮する。
・傷病名が判断できるカルテ記載があること。
レセプト提出時に今一度、診療内容が病名と一致しているか確認して下さい。
(文責:京都糖尿病医会会長 和田 成雄)
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