第19号 −平成24年8月1日発行−
■発行人:和田成雄  ■編集人:井原 裕  ■題字:福井 厳 顧問
京都糖尿病医会会長に就任して
和田 成雄
 京都糖尿病医会は平成14年に京都府全域で糖尿病診療に携わっている京都府立医科大学、京都大学、および其の関連病院、さらには一般開業医に至るまで、或いは糖尿病をはじめとした生活習慣病に関わる循環器科、眼科、外科、神経内科、腎臓病科そして透析科等の医師が一同に会し、研鑽を積みあるいは情報交換ができる場として設立されました。初代会長は宇治市で開業をしておられる土井邦紘先生がお勤めになり、事務局は私の診療所に置き、私自身は総務を担当し及ばずながら会長を補佐して参りました。しかし、この度、土井会長が勇退されました後を受け、私が平成23年6月25日に開催されました京都糖尿病医会理事会において同会会長に推挙されました。
 糖尿病患者の激増に呼応して数多くの学術講演会が製薬メーカー主催で開催され、広範囲に亘る情報が発信されていますが、多くの場合、演者が特定化され、開催メーカーの趣意に沿った講演内容となり、必ずしも演者の本音を聞かせていただけるとは限りませんでした。そこで京都糖尿病医会では製薬メーカーに依存せず、独自でテーマを決め、演者を選定し、本音を聞ける会を開催したいと考えて参りました。たとえメーカーとの共催においても開催日、プログラム内容、演者の選定などの段階から関わり、公平・中立的な講演を聞かせていただけるよう配慮しました。お陰様で京都糖尿病医会が関与する講演会は常に好評を博し、我々の考え方も多くの先生方に認知されてきたと自負しております。
 ところで、私は昭和49年京都府立医科大学を卒業後、京都第一赤十字病院で研修医をし、その後同院第一内科に入局し、角本永一先生、正木清孝先生、中山昌彦先生などのご指導を受け、糖尿病を中心とした生活習慣病、内分泌疾患、膠原病などの診療に携わってまいりました。平成10年同院退職後は京都市東山区で内科医院を開業し、曲がりなりにも糖尿病を中心とした診療を続けて参りました。糖尿病の長期に亘る経過中には、細小血管障害、大血管障害は勿論のこと悪性腫瘍、骨折、認知症など様々な合併症や事故に遭遇し、多くの診療科との連携が必須となってまいります。医師になって30数年、この間、院内連携、病診連携を構築するために努力をしてきたつもりでおります。この度、はからずも京都糖尿病医会会長という重職に就かせていただきましたが、私自身は学識や経験に乏しく、強いリーダーシップも持ち合わせておりません。しかし、会長就任後すでに1年近くが経過しましたが、多くの先生方の絶大なるご協力を得て、順調に船出をいたしました。今後は糖尿病診療に関わる全ての医師、コメディカルの方々のボトムアップ、レベルアップを図り、少しでも糖尿病診療のお役に立てるよう、引いては糖尿病の一次予防、二次予防、三次予防に貢献できるように京都糖尿病医会を運営して行きたいと思っております。
 多くの先生方のご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
京都糖尿病医会 役員
会長 和田成雄
副会長 鍵本伸二西嶋一晃山本泰三
名誉会長 土井邦紘
顧問 稲垣暢也清野 裕中村直登福井 巌
功労会員 浅山邦夫金綱隆弘森本昌親
監事 辻 俊三中川竹彦
総務 荒木義正井原 裕千丸博司田中 亨桝田 出
会計 大石まり子岡本三希子西川昌樹畑 雅之
学術 梶山静夫紀田康雄小出操子佐々本研二島津 章高木 力千原悦夫 中埜幸治中野忠澄原島伸一原山拓也福井道明八幡兼成米田紘子
理事 浅山邦夫東 信之熱田晴彦荒木義正井原 裕梅川常和大石まり子岡本三希子岡本吉将垣内 孟梶山静夫金綱隆弘紀田康雄木村明祐葛谷英嗣小出操子佐々本研二四方泰史島津 章須川秀夫菅原 照関 透千丸博司高尾嘉興高木 力高倉康人田中 清田中 亨千原悦夫辻 俊三辻 光土居健太郎中井義勝中川竹彦中埜幸治中野忠澄西川昌樹西野和義長谷川剛二畑 雅之服部正和原島伸一原山拓也福井道明細川雅也桝田 出真多浩子松村理司三浦次郎宮崎博子宮谷博史森下寿々枝森本昌親八城正知八幡兼成山田和範山本康正吉田俊秀吉政孝明米田紘子
事務局 京都糖尿病医会事務局
〒603-8207 京都市北区紫竹牛若町31−3
かぎもとクリニック内
ホームページ http://www.kyoto-dm.jp/index.html
京都糖尿病医会の創生期
土井 邦紘
 今回、京都糖尿病医会の会長を退任した機会に、本会の設立、運営にあったてきた当人として、其の経過について記録する。後任の和田成雄新会長からこの話を依頼された時、当時のことを記録していないので、一部の資料から思い起こしながらまとめた。したがってあいまいな部分もあるが許されたい。
 私が神戸大学を辞して、ここ京都府宇治市に開業したのが平成4年の8月3日である。7月31日は神戸大学付属病院で最後の外来を行い、患者さんに別れを告げた。まだ片付かない私の部屋の整理を技官の原田嬢にお願いして、誰も居なくなった大学の私がいた研究室を後にした。長年過ごした病院であり、今日が最後かと思うと一抹の寂しさがこみ上げた。
 しかし、3日後には宇治市の小さな診療所の椅子に座って、患者さん来るのを待ち受けていた。当時を知る私の同僚、知人はまさか私が開業するとは思いもよらなかったことと思う。開業したものの、私には知らない土地であり、患者さんの数はまばらであった。そこで、これまで、勉強する機会が少なかった糖尿病以外の分野に顔を出す時間できた。何もかも新鮮であった。呼吸器科、循環器科、皮膚科、消化器科などの講演会は勿論のこと、近隣の病院が開催される研究会や時には厚かましく、自分が送った患者さんの手術にまで立ち会わせて頂いた。今は、体力的に無理となったが、今は懐かしい思い出である。その内に、研究会の帰り道、数人の先生方から話が持ちかけられることがあった。其の急先鋒と言える先生が今は亡き入野先生であった。先生行きつけの祇園でうどんをすすりながら話を切り出された。「土井先生、京都に糖尿病医会を設立しようや」という言葉であった。「鴨川に渡し船を作ろう」ということでもあった。この祇園の家は70歳ぐらいのおばさんが置き屋をしており、入野先生はここで、静かにアルコールを楽しんだり、時にうどんや食事をしてヒト寝入りする安住の場所とか、誰にも邪魔されないのが心地よいということであった。そんなある日、家に呼ばれて、もう少し話を具体的にしようということになった。私もその頃、糖尿病は血糖のコントロールのみでなく、動脈硬化症をはじめとした合併症の予防、治療が必要であり、名前は糖尿病医会でも生活習慣病を含める、すなわち病診連携も視野に入れて糖尿病に興味をもつ一般開業医から、大病院、大学まで広く会員を募集し、かつ、循環器、腎臓、透析、眼科、神経科などの専門医も加入してもらう必要性を感じていたので、これを力説した。私の話を聞いて皆さん少し、驚かれたようであったが、話を進めることになった。そこで、既存の糖尿病研究会が幾つかすでにあり、競合しないようにするのには如何にすべきか、ということになった。そこで、私は兼ねてから赤澤好温先生が大病院と開業医との連携を目的とした糖尿病の研究会(京都糖尿病治療研究会)を主宰されており(大日本製薬株式会社後援)、また、私と同じく、「糖尿病の治療は血糖コントロールのみに非ず」という文章をのせられている本を目にしたことがあったので、赤澤先生の研究会を大きくしてはと提案した。私に一任されたので、当時の京都糖尿病治療研究会の世話人の先生方の数人に相談したところ同意が得られたと判断した。当時の大日本製薬株式会社の担当者に話を持ちかけたところ、赤澤先生もきっと喜ばれることだろうと思うという話であった。ある日の世話人会で私は意を決して、この話を切り出したのだが、意に反して、赤澤先生からは良い返事を得ることが出来なかった。しょんぼりして家に帰ったことを今でも覚えている。新しい提案であり、赤澤先生も同じ構想を持っておられたので了解して頂けるもの早とちりをしていたのであった。数日後に赤澤先生からお手紙を頂いた。その中にはやはり同様のお考えが述べられていたが、自分達の会以外に新しい感覚で研究会を持たれてはと示唆される内容であった。
 それなら、どのような研究会が望ましいか、色々と思い悩んだが、ふっと、医師になってから最初に講演会を兵庫県明石医師会から依頼された時の光景が頭をよぎった。初めての講演であり、自分達のデーターを詳細に吟味してまとめスライドを作成した。神戸大学の助手(現在の助教)になって間もないころであり、超多忙を極めていた。講演を終え帰宅の段になって、講演を依頼して下さった医師会の先生方は蜘蛛の子を散らすように会場を出られた。後に残ったのは製薬会社の人達であり、労をねぎらうとともに謝礼を頂いた。私は驚いた。当然謝礼は主催された医師会から頂くものとばかり思っていたからであった。しばらくして、其の地区の医師会の会長が戻ってこられ、寿屋へ連れて行って頂いた。その際に、「医師会の先生方も先生の講演に感謝しておられたよ」と言われた。講演会も多く、現在の医師会費ではこれを賄いきれないと言われたことを思い出した。
 学術講演会は自分達のためのものであり、少し工夫をして出来ることから、自分達の学術講演会あるいは研究会は自分達で何とかしようという試みである。私に声をかけられた先生や賛同して頂いた先生方はほぼ同じ意見であった。それでは、ということで、具体的に動くことにした。入野先生のお知恵を拝借しながら、福井巌、榊田、金綱、葛谷・・・先生方に相談して、オール京都で構成しようということになった。旧京都糖尿病医会の役員の先生方には大変な御努力を頂いた。しかし、設立にあたっては京大、府立医大学の参画がないと初期の目的は果たせないということになり、その仲介役を任されることになった。ある少し寒い日でしたが京都大学旧産婦人科病棟に陣を構えておられた清野 裕教授を尋ねた。先生とは神戸時代からの知り合いであり、教授選にあたっては色いろと意見交換をした仲でもあり、私がお願いする役目を請け負った。少し待たされたが、これまでの経緯を説明すると「なかなかいい話だが京都は少し難しいこともあるが、まずやってみて下さい」といことであった。了解されたものとして以後、府立医大の糖尿病チームリーダーである中村直登講師(現教授)、さらには京都大学第二内科の糖尿病チームリーダーであった京都医療センター院長であった葛谷英嗣先生に相談した。いずれも快諾が得られたので、この会の今後の存続も考慮して京都府医師会の専門部会の一つに加えて頂けるように申請した。この間、京都糖尿病医会設立趣意書(別記)を持って発起人となって下さる先生方を仲間の先生方が次々と当たって下さった。その結果は予期しないほどの反響であり、多くの先生方が待ち望んでおられたという感触であった。当時、「糖尿病科」という標榜はまだ許可されておらず、京都府医師会理事会ではその理由のために許可されなかった。そこで、発起人が予想以上に多く集まったので、発起人(別記)会をすることにした。創設のための発起人会が平成13年9月17日に開催された。清野教授をはじめお歴々が森本昌親先生、桝田 出先生の御好意でお借りした京都専売公社(後の東山武田病院、現在;ホテル建設予定の建物)の会議室に集合した。驚いたことに34名という多くの専門医の方々に集まっていただくことが出来たのである。
 発起人会ではこれまでの運動の経緯と準備した発起人名簿、会則(案)を提示し会則を一部訂正の後承認され、その会が理事会となり、私が早速会長として選出された。そこで、会独自の姿勢を堅持することを基本に年間の学術集会のあり方について侃々諤々の意見交換があり、少し殺気立った感じがした。それだけ集まってきた先生方はこの会の発足を長い間渇望していたのであろう。色々な意見が出されたが、最後に清野教授からこの会は出来るだけ「自前でやること」という注文がなされた。「京都糖尿病医会」と銘々の後、今回の発起人が「当会の理事」と決定されたので、そこから理事会となり、会長選挙となった。そして、私、土井邦紘が初代の会長に選出された。
 直ちに創設記念講演会の構想が錬られ、同時に同じ会として発足するなら、京都府医師会の分科会として活動は出来ないかと提案した。幸い本会の賛同者に京都府医師会の理事の先生もあり、強力に推薦することが確約された。府医の理事会では当時「糖尿病」は正式に認められた標榜科ではないという理由から2回見送られたが、平成14年1月19日付で京都府医師会 横田 耕三会長あてに再度申請した。その結果、平成14年2月7日の理事会で「糖尿病は生活習慣病の柱であり、一般開業医のみでなく各診療科の先生が加入されていることを踏まえて承認する」という返事を頂いた。承認書には専門医会としての発足は平成14年4月1日以降となっていた。此の理事会の承認には当時の府医の理事であった安達現副会長、上原春男現監事の多大のご協力、御支援があったことを申し添えておきたい。そして、平成14年3月23日には「京都糖尿病医会創設記念講演会」(別記)を京都タワーホテルにて平成14年6月8日には「第1回京都糖尿病医会総会および講演会」をぱるるプラザ京都にてそれぞれ開催した。
 こうして、京都糖尿病医会はスタートした。以後、10年間が経過して会員数も増加して270名を超える大所帯となった。学術講演会は毎回、一工夫も二工夫もして、今、会員がどんな内容の学術講演会を望んでいるのか吟味しながら演者も日本各地から広く選出し、出来るだけ多くの時間をデイスカッションに割いている。これは、製薬会社と共催する時も、プログラムのキャッチフレーズから内容、演者に至るまで、検討している。この姿勢のためか、参加者も毎回多く、参加してよかったと寄せられる先生方が増えていることは、今後の本会の発展が期待されるところでもある。お陰さまで、現在もなお、会員数が増加している活気のある「京都糖尿病医会」である。
第20回 糖尿病医会 学術講演会
平成23年11月26日 京都府医師会館
総合司会 特別講演司会 特別講演司会
京都府立医科大学 三菱京都病院 日本バプテスト病院
福井 道明先生 中野 忠澄先生 米田 紘子先生
膵島移植の現況
京都大学 肝胆膵・移植外科 岩永 康裕先生
 膵島移植は1970年代から実験的に行なわれていたが、2000年にカナダのアルバータ大学からいわゆるエドモントンプロトコールが発表されて移植成績が飛躍的に向上し世界中に広まった。本邦では2004年4月に第1例目が実施された。インスリン離脱に複数回の移植が必要で、一旦離脱したとしてもそれを長期間維持するのは難しい。しかし、高い安全性と血糖値の不安定性に対する治療効果は確認されている。本邦では、2007年3月から臨床膵島移植は停止していたが、膵・膵島移植研究会を中心に、高度医療評価制度の下で臨床試験として2012年6月に再開予定である(講演では2011年12月再開予定と発表、その後延期された)。
膵島移植は、糖尿病に対する細胞移植医療の臨床型として確立されつつあり、今後、多くの異なった学術分野が有機的に融合することによってトランスレーショナルリサーチのプロトタイプとしてさらなる発展を遂げることが予想される。
1型糖尿病のUP TO DATE、 -MDI,カーボカウント,CSII,そして・・・
大阪市立大学大学院 発達小児医学教室 川村 智行先生
 インスリンの発見から70年が経過した。生命維持のためのインスリン注射から、合併症予防と患者QOLが両立できるインスリン療法へと変遷してきた。
 ヒトインスリンの合成が可能になり、超速効型や持効型インスリンアナログが登場。ペン型注射器が普及し、注射針も限界なほど細く短くなった。最新のインスリンポンプは多彩なインスリン注入を可能にした。微量血液で短時間に自己血糖測定ができる。カーボカウントは、食生活の自由度を変貌させた。
 持続血糖モニターが登場し、血糖日内変動が把握できるようになった。リアルタイムに血糖値をみながら血糖管理できるようになる日も近い。血糖モニターとインスリンポンプの連動により、自動的に血糖管理する研究は進んでいる。
 しかし、各種インスリンやデバイスを使いこなす患者の療養行動に問題があれば効果が無いことも事実である。我々医療者は、患者の療養行動をサポートできる面接技術も獲得する必要がある。
糖尿病と勃起・射精機能
京都府立医科大学大学院医学研究科 泌尿器外科学 邵 仁哲先生
 糖尿病性勃起障害に対する第一選択薬は、PDE5(ホスホジエステラーゼ タイプ5)阻害薬であり、多数のrandomised placebo-controlled studyにおいても、その有効率は50〜75%であり、無効例においてはプロスタグランジンE1などの血管作動薬の陰茎海綿体内注射や陰圧式勃起補助具などが使用されている。また最近では、テストステロン値が低い症例であれば、テストステロン補充療法なども行われている。
 糖尿病に伴う射精障害の治療として主に用いられている薬剤は、逆行性射精に対しては、膀胱頸部を閉鎖させる目的で交感神経賦活作用と抗コリン作用を有するものが使用されている。具体的には、塩酸エフェドリン、塩酸フェニルプラパノールアミン、塩酸イミプラミン、あるいは抗ヒスタミン作用を有するブロムフェニラミンなどが使用されているが、副作用が強いため、最近ではアモキサピンが頻用されている。薬物療法の効果が不十分な場合には、陰茎亀頭部のバイブレーター刺激による射精誘発や電気射精などの方法がある。
糖尿病足〜病態と治療〜
京都府立医科大学大学院 医学研究科運動器機能再生外科学 生駒 和也先生
 糖尿病足の病変は足趾間や爪の白癬、足趾の変形や胼胝にともなう足潰瘍、足壊疽、神経障害性関節症であり、患者のQOLは病変の進行とともに低下する。また患者の自覚症状に乏しいのが特徴である。
 病態は神経障害、動脈硬化を背景とする末梢循環障害と、感染症が単独ないし複合して種々の病態を形成する。頻度は足潰瘍が1.8%、切断が発症14年目で9.9%と報告されている。また、末梢神経障害に伴い、神経障害性関節症生じる。神経障害性関節症は、外傷が契機となり、痛覚脱失や鈍麻により異常運動の制御ができないため、関節破壊を招く。
 足病変の予防には年に1回のMonofilament法による知覚検査が有効である。知覚異常の程度により、適切な履き物の指導、患者教育、フットケアプログラムを行うべきである。とくに患者には、毎日足の観察をすること、靴を履く前に靴の確認すること、毎日ぬるま湯を使って足を洗う、自分にあった靴と靴下を選ぶことを指導すべきである。
第20回地域学習会
平成24年3月3日
 2012年3月3日 公立山城病院 中埜幸治院長を世話人に 京都糖尿病医会南部学習会が開催されました。メインテーマは@2型糖尿病の薬物療法(既存薬剤とインクレチン関連製剤の有用性と問題点)AHbA1cの血糖管理指標としての有用性と4月1日から国際標準で記載されることについての日常診療での対応の2つでした。糖尿病医会会長の和田成雄先生のご挨拶のあと 河村基先生の司会で第一部の講演がありました。
 山村祐嗣先生から 「両者の有用性」として21例のアログリプチン使用症例の報告があり、11例で良好な血糖管理が達成されました。単独、αGIに追加、αGIとメトグルコの併用からアログリプチンとメトグルコの併用への変更、SU剤単独に追加、低血糖を起こしていた症例での切り替え症例が有効でありました。また無効な症例は食事・運動療法が守れないのではないかとの考察がありました。
 小出からは「インクレチン製剤の使用経験」のタイトルで6ヶ月間の治療成績を報告しました。GLP-1アナログではリラグリチド、エキサナチドのどちらもBMIが約1低下しHbA1cはリラグリチドで8.5→7.8%に エキサナチドでは8.5→7.2%と低下しました。DPP4 阻害剤ではビルダグリプチンではHbA1cが6.9→6.6%にシタグリプチンでは7.0→6.4%に低下しました。BMIの平均値では変化がありませんでした。アログリプチンは3ヶ月の治療期間しか取れず明らかな変化は見られませんでした。ビルダグリプチンで2日目の顔面潮紅とかゆみで投薬中止した1例と全身浮腫で中止した1例がありました。インスリン治療でも血糖管理が不良の肥満2型患者で、以前はメトホルミン750rとヒューマログmix50 54単位/日でHbA1c 8.5% であったものが、エキセナチドの併用でインスリン24単位に減量できHbA1c 7.2%まで改善した症例がありました。食事療法を守れない症例では再度血糖が悪化する傾向がみられました。
 松森篤史先生は「Insulin投与からGLP-1 agonist投与へ変更した症例」について報告されました。大血管障害の進展抑制にはHbA1cを下げるだけでなく、低血糖を起こさずにglucose spikeを抑える必要があり、インスリン治療からGLP-1 agonist治療へ変更し良好な結果を得た症例を報告されました。インスリン分泌が保たれており、糖毒性がない状態ではうまく変更することができ、インスリン使用例と比較しHbA1cも同程度かそれ以上に低下しました。またインスリンに比べての利点として、低血糖を起こしにくいこと、グルカゴン分泌を抑制することでの食後過血糖を抑制、食欲を抑え体重低下作用があることなどをあげられました。課題としては、インスリン依存状態や糖毒性のある症例では使用できないこと、どのような症例が有効例、無効例になるのかの判断材料はあるのか、長期的な予後、効果判定にはどのくらいの期間が必要か、どこまでの膵外作用があるのか等をあげられました。
 第二部はAHbA1cの国際標準化と血糖管理指標としての有用性について、中埜幸治先生の司会でディスカッションがありました。
a)血糖管理指標としての有用性と問題点:
 「HbA1cの診断時の有用性とその後血糖管理指標としての問題点」につき症例を掲示し解説されました。症例は53歳の時健診でBMI 21.2、FPG 163 mg/dl、HbA1c 4.9%と異常を指摘され近医を受診。OGTT:糖尿病型、GA24.5%, 1.5AG:1.4μg/ml、GAD抗体陰性の結果から2型糖尿病と診断され、食事療法とSU薬が投与されました。しかし、血糖値管理は不良にもかかわらす、HbA1c6%未満であることから問題なしと告げられ、FPG高値に対しSU薬の増量を続けられました(グリクラジド40⇒160mg/日)。59歳時に山城病院受診したところ、すでにインスリン分泌能は低下し、強化インスリン治療が必要であることが判明しました。異常HbによりHbA1cが血糖管理指標にならない症例でした。血糖値に反してHbA1c値が異常であれば、GAなど他の血糖管理指標を測定し、HbA1c値に影響を与える他疾患(溶血性貧血、肝疾患、腎不全,異常Hbなど)の有無を考慮すべきと結ばれました。
b)HbA1cのJDS値とNGSP値併記についてーパネルディスカッション:
 2009年3月にIDF, ADA, EASD, IFCCの4学会合同のExpert CommitteeからHbA1cを糖尿病診断に用い、しかも米国で標準化されたNGSP値≧6.5%を用いることを推奨すると発表されました。そこで、日本糖尿病学会(JDS)は2010年の糖尿病診断基準改定でHbA1c(JDS値)≧6.1%を診断基準として血糖値と同列に扱うことが決定されました(糖尿病;53:450-467,2010)。 また、2012年4月1日から日常診療において、NGSP値への移行、JDS値との併記をJDSから通達されました。HbA1c値国際化の意義を個々の患者背景(年齢、教養、合併症の程度など)を考慮して説明していくべきであることがパネルディスカッションで確認されました。
 中埜院長の閉会の挨拶で学習会は終了しましたが、遠路を京都府の南端までおいでいただいた医会の先生方にお礼申し上げます。
(文責:小出 操子)
第9回IDF-WPR会議/第4回AASD学術集会のお知らせ
京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学 原島伸一
 第9回国際糖尿病連合西太平洋地区(IDF-WPR)会議および第4回アジア糖尿病学会(AASD)学術集会が、2012年11月24日(土)から27日(火)の4日間、国立京都国際会館にて初めて合同開催される。これまでIDF-WP会議とAASD学術集会はそれぞれ個別に開催されてきた。しかし、アジアおよび西太平洋地区の糖尿病患者は激増しており、糖尿病の病態が多様で民族や文化的背景も異なることから、研究、予防、治療、教育のすべの観点から対策を考えることが緊急の課題となっている。そのため、基礎研究や診療研究と患者教育や糖尿病診療を個別の学会で議論するよりも、それらを同時に議論し問題解決にあたる方が、効率的かつ現実的である。そこで、両学会は2年に1度、IDF-WPR会議とAASD学術集会を同時開催することになった。
 IDF-WPRは、地域の糖尿病診療と糖尿病教育を推進し、糖尿病療養指導の育成を通して糖尿病患者のQOL向上を目指している。一方、AASDは、アジア人の糖尿病の病態や治療に関する研究を推進すべく2009年3月に設立され、東アジア、東南アジアの糖尿病に関連する19団体が加盟している。AASDの機関紙であるJournal of Diabetes Investigation (JDI)はインパクトファクター取得が決まり、AASDの活動は世界的に注目を集めている。
 本学会は、「Exploring Diversity of Diabetes in the WPR; Science-Navigated Care and Education(西太平洋地区における糖尿病の多様性の探求;科学的根拠に基づく糖尿病の教育とケア)」をテーマに、東アジア、東南アジア、その他西太平洋地区の医療者、研究者が一堂に会して、糖尿病に関する、@臨床ならびに基礎研究、A教育と療養生活、B予防と治療について討議することで、同地区の糖尿病管理への新たな展望が開かれるものと期待されている。
 学会プログラムに関しては、初日の11月24日(土曜)には市民公開講座が開催される。市民公開講座は、IDF-WPRの市民向け講座だけにとどまらず、糖尿病シンポジウム、糖尿病協会近畿地方会、世界糖尿病デーも同時開催となり、市民公開講座はこれまでになく盛大に開催される。市民向けの一般講演が終了後、引き続き3kmラン/ウォーク、いきいき体操、糖尿病カンバセーション・マップの3つの公開イベントが行われる。3kmラン/ウォークでは、宝ヶ池を、美しい紅葉を眺めながら1周する。いきいき体操は、エアロビクス運動を基本に、体を動かすことの基本を学びながら楽しく運動ができるように企画されている。また、新しい糖尿病教育ツールとしてIDF、日本糖尿病協会が普及活動を行っている糖尿病カンバセーション・マップを体験してもらう。公開イベント終了後は、参加者同士が交流を深められるようにGet Together Partyを企画している。
 25日からは、特別講演、教育講演、シンポジウムなどのプログラムが開催される。会長講演は、第4回AASD会長である堀田 饒先生が25日に、第9回IDF-WPRの会長である清野 裕先生が26日に行う。特別講演は26日に行われ、iPS細胞研究の権威である京都大学の山中伸弥先生が壇上に立たれる。教育講演は、糖尿病概論をK George M.M. Alberti 先生(Newcastle Univeisity, UK)が、インクレチンについてDaniel J Drucker 先生(University of Toronto, Canada)先生が、インスリン抵抗性について門脇 孝先生(東京大学)が、糖尿病合併症についてGeorge L. King 先生(Joslin Diabetes Center, USA)が、糖尿病教育についてTommy Ty Willing先生(フィリピン糖尿病学会)が、インスリン分泌について清野 進先生(神戸大学)が最新の知見を発表される。シンポジウムは、IDF-WPRとAASDのそれぞれの学会の特徴に合わせて、Official Program、Basic Science、Clinical Science、Education and Care、Health system and epidemiology、Challenges in the WPR の6つのカテゴリーから構成され、3日間で38にも及ぶシンポジウム、4つのディベート、2つのワークショップが開催される。また、IDF-WPRでは、1型糖尿病患者さんが中心となったYouth Leadersの活動を支援しており、Official Programとして、活動方針を発表する機会を提供している。口演は、18セッションで100演題以上、ポスター発表は300演題が行われる。
 本合同学術集会には、日本国内から2500名、諸外国から1500名、合計で4000名程度の参加が見込まれている。このように国際色豊かで、各国の多様性を議論する国際学会は少なく、若い医療者、研究者が、国際的に活躍するきっかけとなる場を提供できるものでもある。諸外国の医療者や研究者と接し、議論し、相互理解することは、日本の国際貢献にとって大変重要であり、多くの医師、コメディカル、研究者が参加し、発表されることを望む。詳しくは、学会ホームページを参照していただくか、あるいは、本学会事務局までお問い合わせいただきたい。
事務局:
京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学
〒606-8507京都府京都市左京区聖護院川原町54
TEL:075-751-3560
FAX:075-751-4244
E-mail:9idfwpr_4aasd@metab.kuhp.kyoto-u.ac.jp
URL:http://www2.convention.co.jp/idfwpr2012/
尚、AASDではアジア各国、並びに、世界から広く会員を募集している。日本からも多くの医療者や研究者が会員になられることを期待する(http://www.aa-sd.org/)。
糖尿病医会事務局だより
かぎもとクリニック 鍵本伸二
 長年にわたり、京都糖尿病医会の事務局を運営して下さっていた和田先生が昨年の総会で新会長に就かれましたのを機に、事務局を引き継ぎました。なにぶん不慣れなため、随所に行き届かないところがありましたことを、まずお詫び申し上げます。会報の発行も滞っていましたが、いはら内科クリニックの井原先生に広報担当を引受けて頂いて、なんとか再開にこぎつけました。今後とも糖尿病医会の活動を支えるお手伝いが出来るように微力ながら精進したいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、「新事務局からも会報に何か書きます」と安請け合いしたものの、たいした話題が思いつきません。かといって、引き継ぎましたというご挨拶だけではあまりにも紙面汚しですので、時事ネタを少しばかり・・・
 福井県の原発が止まったまま夏を迎えようとしており、節電対策がマスコミの話題に上らぬ日はありません。日本のエネルギー政策がどうあるべきかといった難しいことはさておき、我々の日常生活や診療に影響する停電があるのか、あるとすればそれにどう対処すればいいのか、考えざるを得ません。我々開業医では、電力消費量がピークとなる時間帯は午前診と夜診の合間となるケースが多いので影響は少ないかも知れませんが、午前の診察が長引くこともよくあります。電子カルテを使っている場合、停電でコンピュータが止まった時点で診療がストップしてしまいます。当院では私の趣味を兼ねて、いくつかの対策を施しましたのでご紹介致します。
 パソコンなどの停電対策として無停電電源(UPS)がよく使われていますが、通常のUPSでバックアップできるのはせいぜい数分間です。これは瞬断対策とはなりますが、本格的な停電時には、安全にパソコンをシャットダウンする時間を稼ぐのが精一杯です。かといって大容量バッテリーを備えて長時間の停電に耐えられるものを探すと、名の通ったメーカー品は数十万円〜数百万円と極めて高額になります。これを安く実現できる写真の装置を見つけました。バッテリー充電機能と自動転送スイッチがついた1500W(ワット)の正弦波インバーターです。自動転送スイッチというのは、日常は100V(ボルト)商用電源を使い、停電などの有事の際には瞬時にバッテリーからの電力供給に切り替わる仕組みです。これに大容量のバッテリーを組み合わせると、パソコン2〜3台+レーザープリンターを数時間使うことが出来ます(時間は組み合わせるバッテリーの容量次第)ので、とりあえず最低限の診療(診察してカルテを書いて処方箋を発行する)は続けられます。1500Wの容量があれば通常の電子機器はほぼ何でも使うことができます。
 組み合わせたバッテリーは、ディープサイクルバッテリーという種類で、鉛バッテリーですが普通の自動車用とは少し違っていて、充放電の繰り返しに耐えるようにできています。購入価格はインバーター本体(BPUPS-1500W)が49800円、ディープサイクルバッテリー (G&Yu SMF31MS-850、115Ah)が2個で34600円でした。バッテリーの容量は2個あわせて2760Wh(ワットアワー)となり、電子カルテ用のパソコンを2台(受付と診察室)動かして、時々レーザープリンターを作動させても3時間以上持つ予定です。
 実際の使用に当たってはいくつか注意が必要です。1500Wの出力を12Vのバッテリーから取り出そうとするとバッテリーからは最大130A(アンペア)の莫大な電流が流れます。ここに使う電線は相当太いものでないと危険です。また、12Vの電圧を素手で触っても感電する危険はありませんが、誤ってショートさせると火事になりますので、慎重に扱わなければなりません。
 これと同等の容量をもったインバーター数台と1.6kVAのガソリン式発電機(写真:HONDA EU-16i)によって、少々の停電なら乗り切れるように備えています。スタッフからは「また院長がオモチャを買ってきた」と若干冷ややかな目で見られていますが、本当にオモチャで終わってくれたほうがいいですね。
保険診療のQ&A
最近、審査をしていて気が付いたことを列挙してみます。
投薬関係:
・DPP4阻害剤の適応:2型糖尿病に限る。併用可能薬は次の通り。
  ジャヌビア、グラクティブ:インスリン、SU剤、ビグアナイド、α-GI、アクトス。
  エクア:SU剤のみ。他はすべて不可。
  ネシーナ:SU剤、ビグアナイド、α-GI、アクトス。
  トラゼンタ:単独投与のみ可。
・DPP4阻害剤とグリニド系薬剤の併用は認められていません。
・ビクトーザまたはバイエッタを使用して在宅自己注射指導管理料を算定している時に、IRI測定は可能ですが、「ビクトーザまたはバイエッタ投与」との注記を付けて下さい。また、注記を忘れたために査定された時は、「ビクトーザ投与」または「バイエッタ投与」との注記を付けて再審査に提出して下さい。
・SU剤とグリニド系薬剤の併用は不可です。
・1日750r以上の投与が認められているのはメトグルコのみです。
・インスリン処方量が投与日数を大幅に超えているレセプトが多数みられる医療機関があります。本来、京都ではインスリン処方時に投与日数を記載する必要はありませんが、過量投与にならないように注射単位数と処方単位数を十分確認してください。
検査関係:
・糖尿病患者のIRIまたはCPR測定は3か月以上に1回認められています。いまだに多数例に対して連月あるいは隔月に測定しておられる医療機関があります。注意して下さい。
・多くの疾患に対して診療ガイドラインが作成されていますが、記載内容が全て保険審査で容認されているとは限りません。疑問に思われることが有れば京都糖尿病医会事務局までお尋ねください。
・「糖尿病疑い」の病名で何か月にもわたりHbA1cを測定されているレセプトがあります。「糖尿病診断のフローチャート」に従って検査して下さい。
その他:
・基金ではすでに突合審査が開始されています。院外処方箋の病名漏れがないか十分点検して下さい。
(文責:和田 成雄)
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